2007年12月8日土曜日

超難解 次世代文化フォーラム


国際文化交流推進協会というところの主催で、次世代文化フォーラムというのがあるというので、行ってきたの。

それが信じられないほど高度な内容で、知的レベルが違いすぎ。そういう難しい話を聞いている時って、普通は眠ってしまうのだけど、あまりに難しすぎて、発言の内容を解釈するのに精一杯で、寝る暇もないくらいのフォーラムでした。

どうして参加してみようかという気持ちになったかというと、今、割と「次世代」という言葉がよく聞かれるでしょ。でも何となく分かったようだけど、本当は何のことだか分からない。自分が生きている時代ではなくて、自分たちの子供や孫にも伝えられるようなものなのかしら、と思ったのが一つ。

それと、フォーラムの場所が九段下にあるイタリア文化会館だったことも参加した理由。
そうね、20年近く前に、別の仕事をしていた時に、その会社の本社は九段下にあったの。それで初期研修などにもよく通っていたので懐かしかったのね。
またイタリア文化会館は何かと話題になるところなので、この目で確かめたかったというのも理由です。

それにしてもね、このフォーラムが普通と違って凄いなと感じたところは、最初に申込書をワードでダウンロードしてそれをメールに添付するのだけど、その申込書の記入欄に「あなたは理系ですか、文系ですか」という欄があったのよ。普通なら住所・氏名・年齢くらいしか書かないのにね。
そこからして悩んでしまったわ。もちろん理系人間ではないけれど、そうかといって、文系でもないし。
結局、記入しないで申し込みました。

靖国神社から少し歩いたところにあるイタリア文化会館は、概観からして赤でモダンなビルディング。
会場の椅子は黒い革張りで、きっとイタリア直輸入のものなんだろうな。座り心地はよかったですよ。

さて、本題のフォーラムだけど、最初はパリのパスツール研究所生物神経科学名誉教授という70過ぎの先生。その次はロンドン大学の心理学の先生で65歳。このお二人の基調講演があって、その後にパネルディスカッション。

パネルディスカッションの進行役はコロンビア大学芸術史のそうね、55歳くらいの先生。発言者は理研の伊藤正男先生。80歳。もうお一人はローマ大学の哲学の教授。65歳くらいかしら。それに先ほどのお二人も加わっての5人でのパネルディスカッションでした。

平均年齢はいつくかしら、とにかくハイレベルの知性集団でした。

このフォーラムのサブタイトルは「感情・身体・脳 人間知性と文化の進化」というもの。
だからもう少し具体的な話が聞けるかなと思っていたけれど、大違いよ。
初めから「美とは何か」、「芸術とは何か」、「人工物の美と自然の美とはどのように異なるのか」、「真実とは何か」・・・・そういった日常生活とはかけ離れたレベルでの話だったの。
がーん、でしょ。

私なんか、どこのスーパーの卵が安いとか、何キロ太ったとかそうレベルの生活パターンなのだから、のっけからショックの連続。

それでも最初に講演をしたフランス人のサンジュ先生のお話は、人間の進化が基本になっていて、少しは分かったかな。
いろんな名画をスクリーンに写して、それが目の網膜に入ってから、脳に到着して、それをどのようにして理解するかという話が面白かったわ。
有名なラスコーの壁画からピカソやマチスの絵まで、たくさんの絵をみせていただいたので、それだけでも目の保養になりましたわ。

それとダリの絵を見せたのだけど、その絵は見方によって、写っているのが男性に見えたり、女性に見えたりするの。1枚の絵でも、その人の意識にあるものや、経験によっていろんな風に見えるというのは面白かったわ。

お次のイギリス人のハンフリー先生というのは、詩人なのか、哲学者なのか良く分からない方でしたが、美を追求している方でした。
いろんな比喩で話をされていたのだけど、「おいしいチーズケーキはマネをしたものでもおいしいけれど、芸術はそうではない。マネをした芸術は芸術ではない」とか話していたけれど、どうしてチーズケーキが唐突に出てくるのかは不明でした。

それにね、このイギリス人の先生の感性は、やはり日本人の感性とはまるで違うのではないかしらと思ったの。
日本人なら誰でも自然の中に美を見つけるじゃない。たとえばお月様とか紅葉とか。
ところがイギリス人の場合は、そうじゃないのよ。人工の美と、自然の美を明確に分けているのよね。
そして絶対的に違うなと思ったのは、そういう自然の美は神が創造したものだ、というところね。
それと美は性的なものと関係があるというのだけど、このあたりはどうもよく理解できませんでした。

私がかろうじて分かったのはこの程度なんだけど、それを進行役のアメリカ人の先生はご自分の言葉にして、もっと深化して説明したの。すごいな~と思うばかりでした。

その後に伊藤先生のお話が少しあったのだけど、人間と他の動物の違いを分かりやすく説明していました。快と不快を基準にして話していましたが、下等動物はどんな時に快感を得られるかというと、単純にエサを取ったときだけど、サルくらいになるとそれに社会的価値判断が加わり、人間はそれに文化的評価がプラスされるというの。
そうね、こういう話なら私でもついていけましたわ。

パネルディスカッションでは壇上の先生たちはとてもエスカレートしていたみたい。とくにイタリア人のヤコベッティ先生は興奮してきたのか、英語で話すのをやめて、イタリア語で話し出したら、かなり攻撃的な内容になりました。
最後のほうには科学者と芸術家の違いや役割を討論していたけれど、科学者でもなければ、芸術家でもない私はただ呆然としていました。

次世代ということでしたけど、私にとっては「異次元」な文化フォーラムでした。

このフォーラムは明日も続きがあり、今度は伊藤先生が基調講演をされるのだけど、明日はお仕事で行けません。残念ね。

それにしてもね、世界中の教授をお呼びして(JALが後援だったのよ)、同時通訳付きの講演だったのに、スクリーンに映し出された大きな文字が、信じられないことにBREIN」だったのよ。「BRAIN」だろうが!!
どうしてこういうチェックができないのか、驚きでした。

私はフォーラムの内容の凄さに圧倒されてしまったのだけど、そこに参加していた人にも感想を聞きたかったわ。みんなどの程度、理解できたのか。私だけが分からなかったのかしら。そうだとしたら情けないけれど、でも通訳つきというのは、ぼんやりとした把握しかできないものですね。

ということで、すごすごと引き上げたのだけど、イタリア文化会館の玄関には「脳内時計」という作品が展示してあったの。
これは「脳内時計の神経機構」を書いた脳科学者の本を下に、芸術家がそれを具体的な作品にしたものなの。
直径10メートルくらいの円に白い砂を敷き詰めて、そこに竜安寺の石庭みたいに、すじがついているの。それがどうも脳波をあらわしているのかしら。
円の中心からは幅が70センチほどの太い木が出ていて、何秒とかいう表示がついていて、それがぐるぐると回るの。
なんとも面白いオブジェでした。

帰りは市ヶ谷まで歩きました。それほど寒く感じられなかったは、フォーラムの興奮がまだ身体に残っていたせいかしら。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

ふ~ん。
本当に次元の違う世界だな。こういう事ばかりを毎日考えている人たちは、逆に日常生活を普通におくれているのだろうかな・・・

おおしまとしこ さんのコメント...

ははは、私もそう思ったわ。こういう人の頭の中を覗いてみたいわ。
少なくとも卵の値段は知らないはずよ。
でもね、同時通訳でなくて、原語で分かったなら、もう少し理解ができたかもしれないと思いました。同時通訳のお姉さんも勉強しているけど、なんだか怒っているみたいな話し方なのでした。