2008年9月18日木曜日

お薦め本


瀬戸内寂聴さんの訳による源氏物語全10巻を先月に読み終えて、それからは源氏物語関連の本をあれこれ読んでいる。

これがまた、面白いのよ。

そのうちの3冊を紹介します。

1冊目は清水義範さんの「読み違え源氏物語」。


清水さんはパスティーシュというオリジナルの作品の作風や文体を模倣して、まるで別のものに仕上げる手法の第一人者です。たとえば深刻な小説でも、ユーモア小説風にしたり、翻訳調にしたりするわけ。

私は清水さんの大ファンで、彼の出す単行本はほとんど読んでいる。
すごく才能あふれる人で、元の本をよりいっそう面白くする技術があると思うわ。

その彼が源氏物語をオリジナルに即しながら、あっと驚く展開をしているの。

たとえば源氏物語を推理小説風に扱ってみたり、かの最高の理想の女性として称えられている藤壺をおバカさんな女性にしてみたり、末摘花はアメリカの田舎の女の子にしてみたり、よくもまあ、こんなにいろいろ考えつくと思うくらい、源氏物語を変身させているのよ。

紫式部さんも草葉の陰から「あら、こういう書き方もあったのね。」と感嘆しているかもしれないな。

でも基本にはストーリーに忠実なので、まずこういう本を読んでから源氏物語に入るのも一つの手かもしれないわ。

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2冊目はかの円地文子さんの「源氏物語私見」。


これは円地さんが源氏物語を訳している時に、不思議に思ったことや、それまでの研究者の意見に対して、ご自分の意見を述べている本。

円地さんの独特な解説があり、素晴らしい内容なので、圧倒されます。

特に登場するヒロインたちの分析は素晴らしい。

いろいろなことを言いきっているけれども、それもこれも円地さんが源氏物語を心から愛しているからだと思うの。

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3冊目は題名の通り、源氏物語の中に登場する人物の服装から物語に触れる「服装で楽しむ源氏物語」。


これは近藤富枝さんの本。

当時の人の服装がイラスト入りで描いてあり、そしてその色合わせによりおしゃれを楽しんだ様子がよく分かる本。

たとえば初夜の時はどんな服装をしていたかとか、お産の時はどんな着物であったとか、葬儀の時はどんなだったとか、詳しく描いてあるので、当時の男女の服装を知ることによって、物語の楽しみが増える本。

服装以外にも当時の人たちの生活なども説明してあるの。

ふーん、とか、はあー、とか言いながら読んでいました。

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この3冊は章ごとに分かれているので、どこから読んでもOK。

暇のあるときにパラパラとめくるにもいいかもしれないわ。

でも結構、奥行きは深い本だと思いますよ。

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

さすがです!
源氏物語に関しての情熱はとしちゃんに敵う人はいないでしょう。感心します。
これらの本だけど私でも読めますか?
特に1冊目はいかがでしょうか。
みんな興味があるんだけどね。

匿名 さんのコメント...

肩書きを「源氏研究家」にしてもいいくらいじゃない?
全部読みきったからこそこういう本が読めるのかと思います。
かんしん かんしん

おおしまとしこ さんのコメント...

さとさんの薔薇にかける情熱ほどではありませんよ。ただ本を読んで、その世界に浸っているだけですもの。
清水さんの本は気楽に読めますよ。
とくに夕顔と空蝉を一人二役に設定したところなんて大笑い。発想がすごいですよ。

おおしまとしこ さんのコメント...

カンカン、そんなすごくはないですよ。
こういう本を読むと、もう一度、オリジナル(訳本だけどね)に当たってみたくなるのよ。えー、そんなこと、どこに書いてあったっけ? と自分の読み方がいかに浅いかが、分かるのです。
3冊目は着物の色のことが書いてあって、お姫様ごとにその人のテーマカラーがあるのがおもしろかった。
たとえば田舎育ちでも美しくて教養があり、それでいて控えめな明石の君は黄色と赤の取り合わせを着ることが多くて、派手だけどすっきりしているとか、書いてあるの。
そういうことを研究しているというのもすごいわ。

おおしまとしこ さんのコメント...

上のコメントを訂正します。
赤と黄色の組み合わせの衣装を身に付けていたのは、明石の上ではなくて、玉蔓でした。ごめんなさい。明石の右は青っぽい色の衣裳が多かったようです。勘違いしていました。