2011年1月20日木曜日

「六条御息所 源氏がたり」

林真理子さんの書いた本はほとんど読んでいます。
特に歴史上の実在人物をモデルにした「ミカドの淑女」(下田歌子)とか、「白蓮れんれん」(柳原白蓮)とか、実際にあった話を小説に仕立てるのはとてもうまい人だと思っていました。

また源氏物語に関しては何人かの翻訳ものを読み、解説書もかなり読んできました。

それが今度、林さんの手による源氏物語が出たので、わくわくしながら読んでいるところです。

それが「六条御息所源氏がたり」です。


この本の感想を一言で言うと、「さやさやさや」とした衣擦れの音が聞こえてくるような読みやすい源氏ものです。
高貴な人たちのため息、宮廷の女房たちのひそひそ声が聞こえ、光源氏の汗と香りが漂ってくるような感じがしました。
究極の恋愛小説といってもいいと思うわ。
時代こそ平安時代の話ですが、現代に生きる女性の恋愛ものといってもいいくらい、やさしい表現で書かれています。

何が面白いかというと、とかく悪女と定評のある六条御息所の生霊にストーリーを語らせるという発想が面白いのです。
源氏のことを「あの方」という表現にしているところがさすがに小説家だと思いました。
今までこんな源氏物語はありませんでしたもの。

ただし普通の源氏本にあるような四季折々の細々とした行事とか繊細な風景描写などはあまりないし、脚注も何もないので、まるで初心者が読んで時代背景がどこまで分かるのかなという感じがしますが、でも恋愛小説としてはとても上質なものだと思います。

この本は紫の上と契ったあたり、葵の上が亡くなったあたりで終わっていますが、多分、何年か後には須磨の話や源氏が亡くなった後の「宇治十帖」も書くのではないかしら。というか是非、書いてほしいわ。

これまで与謝野晶子の源氏や瀬戸内寂聴さんの源氏物語に挫折してしまった人にもお薦めの一冊ですよ。
2日もあれば読めると思いますよ。

4 件のコメント:

マサ さんのコメント...

瀬戸内寂聴さんは、源氏物語に登場する女性の中では、六条御息所が特にお好きらしいですね。紫の上はつまらない女だとか。

「白蓮れんれん」は単行本は読んでいませんが、婦人公論に連載されていたとき、時どき読んでいました。
柳原白蓮は大正三美人の一人だとか。当時にしては、ずいぶん勇気のある生き方をしましたよね。
でも、皇太子(当時)と美智子さまの結婚には、元華族のプライドからか、鬼のように反対して陰湿な運動を起したという話を聞きます。
もっと自由な考えの持ち主だと思ったのに。そのあたりは、私としてはちょっとガッカリですね。

おおしまとしこ さんのコメント...

マサさん、六条御息所が好きだという女性は多いみたいですね。でも私はどうも・・・どちらかというと自由奔放に生きている朧月夜が好きですね。
白蓮さんというかた、そうだったのですか、意外でしたね。でも小説は小説ですものね。そういえば前に仕事で飯塚に行ったとき、その炭坑王のおうちというのを見ましたが、時間が過ぎてしまっていて中に入れませんでした。大正時代の素敵なおうちでしたよ。

さと さんのコメント...

あれ?
コメントが消えたわ。。。

としちゃんおすすめの本は私も読んでみたいわ。
林真理子の本は私も読んだことがあります〜
彼女は着物にも詳しいしね。
白蓮さんはあの時代凄く自分らしく生きたと思っていたけれど皇太子様の件は初めて知りました。
うーんちょっと複雑な気持ち(苦笑)

おおしまとしこ さんのコメント...

さとさん、ごめんねー。私のところにはコメントが2件届いていましたけれど、ブログには1件しか見えないわね。なんともやっかいなブログですいません。

林真理子さんの「着物をめぐる物語」とか「着物七転び八起き」とかはおもしろいですよね。100枚くらい持っているそうですよ。

この本、読みやすいのでお奨めです。源氏物語というと敷居が高く感じるかもしれないけれど、昔の恋愛小説だと思うといいと思います。
きっと平安時代の宮廷の女房の間でもこんな感じで読まれていたのではないかと思いましたね。女性が高貴な人のゴシップが好きなのは今の週刊誌と似ていると思うわ。