2012年2月24日金曜日

「奸婦にあらず」

諸田玲子さんという人の小説を初めて読みました。

この方、1954年生まれだそうなので、もう55歳を超えているのですが、女性作家とは思えないような別嬪さんです。

諸田玲子オフィシャルサイト▼

そんな方の書いた歴史小説がこちらの「奸婦にあらず」。


新田次郎文学賞を受賞された作品ですが、かなりの長編小説で、文庫本でも厚さが3センチほどあったのですが、そんな長編を面白さのあまり、続けて2回も読んでしまいました。

ストーリーを簡単に紹介すると、彦根の若殿である井伊直弼と、彼女の愛人であり女スパイでもある「たか女」さん(実在の人)との物語です。

井伊直弼は「桜田門外の変」の主人公として歴史上でも有名な方ですが、実は彦根藩の14男だった(お父さんはすごい子だくさんでした)ので、殿さまとは縁遠く、「埋木舎」というところでひっそりと暮らしていたのです。
でも彼は誠実で真面目で勉強家で、努力家でした。

そんな若い武士に近づいたのが多賀神社で防人(スパイ)として教育された、たか女さん。
最初のうちは女の武器を使って、手練手管で直弼から情報を得ようとしていたのですが、そのうちに年下の直弼にころりと参ってしまい、スパイであることを忘れて、本当に好きになってしまうのです。

直弼とは相思相愛になったのですが、直弼のおうちのほうはどういうことか、跡継ぎが次々に亡くなったりして、彼は本当の殿さまの後継ぎになってしまい、江戸に行ってしまいました。

参勤交代で彦根に戻った時には密会したりしていたのですが、やはり殿さまともなると本妻をめとったり、もちろん政治の仕事もあるので、なかなか大変です。

そんなうちに日本はペリーが来たり、尊王攘夷派の運動があったりで激動の時代となります。

そして皆様ご存じのように、直弼は「安政の大獄」というのを行い、その恨みで水戸藩士に桜田門外で殺されてしまいます。

実はその事件があった3月3日の雪の日には、たか女さんも、その場で直弼が殺されるのを目撃してしまうのですね。

愛する人が目の前で殺されてしまうなんて・・・・。

直弼が亡くなった後もいろいろな事件が起こるのですが、「奸婦にあらず」は、そのたか女さんの激動の一生を描いた本です。

実はこの本にはもう一人の主人公がいて、長野主膳という国学者(実在の人)なのですが、直弼の師範役でもあり、またたか女さんの第二の愛人でもあるのですが、彼も最後は処刑されてしまいます。

他にも多くの人が殺されてしまうのですが、近江地方特有の柔らかい言葉づかいが、そんな殺伐さや激しさをソフトにしています。
長野主膳の口癖である「ほうやなあ」というのは、私も使ってみたい言葉ですね。

それに寝屋の情景もとても色っぽくて、いいムード。
宇江佐真理さんの時代小説はそれほど愛欲モードはないのですが、諸田さんの時代小説はかなり迫ってきますね。

この小説を読めば幕末当時の政治状況も分かりますし、彦根あたりの地理も分かるので、歴史好き、地理好き、旅行好きの人にはこんな面白い本はないと思います。

彦根が舞台となるこの小説を2回も読んだので、早くもう一度、彦根に行って、彼らが歩いたであろうお寺や神社を散策してみたいものです。

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