2015年12月17日木曜日

同じ名前のヒロイン

私は昔から自分の名前が好きでありませんでした。

というのは、子どもの頃に親しんだ少女小説や少女漫画では、私と同じ名前の人物というのは、だいたいが意地悪な人が多かったからなのです。

当時のお話は、貧しくてもけなげに生きる可愛らしい主人公と、それに対抗するお金持ちで高慢ちきなお嬢様というのが必ず登場しました。
そしてそのイヤミなお嬢様にいは腰ぎんちゃくで、意地悪な女の子というのが存在するのですが、それがたいていは私と同じ名前だったのです。

ちなみに主人公の可愛い子はソフトで響きの良い名前、お金持ちの子は麗子とかいうのが多かったような気がします。

(今の漫画もそうなのでしょうか?)

ただし、現在のようにキラキラネームばやりだと、○○子というのはめったにお目にかからないでしょう。

と、前振りを長々と書いてしまいましたが、実は私と同じ名前の女性が主人公で、美人でお金持ちの家に生まれたのに、明るくて健康的でそして先進的な貴婦人が登場する小説があったのです。

それは伊藤緋紗子さんという人が書いた「華の人」という小説でした。
見るからにゴージャスな表紙ですね。


この主人公は、明治時代の末に北海道・旭川の裕福な家に生まれ、そして東京の山脇で学び、九州の有田焼で有名な深川製磁の息子に見初められて結婚をして、封建的な家制度の中で家業のために尽くしたという実在の人でした。
そのような女性は、当時はモダンガールと呼ばれていました。

彼女は何よりも薔薇の花を愛したそうで、本の表紙も真紅の薔薇です。
とにかく美人で性格が良く、素晴らしい人生を送った方のようで、「バラ」というよりも「薔薇」がぴったりの方でした。

今まで読んだお話の中で、私と同じ名前の女性で、こんなに素晴らしい人はいなかったので、感激しました。

作者の伊藤さんという方はエッセイストで、初の小説だそうですので、私の感想としてはそれほどうまい小説だとは思いません。
というか、非常によく取材をして、史実に忠実になるように組み立てられていますが、あまりに文章が説明調で、くどいところがあります。
それに主人公があまりに100点満点の女性なので、きちんとしすぎていて、面白みに欠けるところがあります。
たとえば林真理子の描くような、女性のいやらしさやあざとさのような面を加えたら、もっと面白い小説になったと思うのですが。

実はまだ半分ほどしか読んでいないので、これからどのように変わるか分かりませんが、どうも美人薄命で若くしてお亡くなりになったようです。

いずれにせよ、私と同じ名前の素晴らしい女性がヒロインなので、気になる小説です。

また私は有田焼に関しては、香蘭社よりも深川のほうが柔らかい感じがして好きなので、その深川に縁のある方のお話、というのは嬉しいですね。

ちなみに深川は香蘭社か独立して作られたそうで、その会社を作ったのは、主人公の舅に当たる人だということでした。





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